筑波大学微分幾何学セミナー
2012年度 講演一覧

2012年度1学期 (4〜6月)

4月24日 (火) 15:15~16:45 相山 玲子 氏(筑波大学・数学域)
Surfaces in Euclidean 4-space and inflection points
概要: 4次元Euclid空間内の曲面上で,inflection point とは,第2基本形式がある法方向に対しては退化してしまっている点を意味します.Inflection point では法曲率が0であり,特に極小曲面の場合はそれが必要十分条件となります.今回,Garcia-Mochida-Fuster-Ruasの問題(1998年)に答える形で,法曲率が恒等的に0でない極小曲面においては,Inflection point は孤立していなければならないことがわかりました.また,その議論の応用として,法曲率が恒等的に0である極小曲面は,3次元Euclid空間内に含まれていなければならないことがわかりました.これは,4次元Euclid空間内の完備極小曲面に対する Smoczyk-Wang-XinによるBernstain 型の結果(2006年)で与えられている条件に対して,その意味づけを与える結果といえます.この講演では,以上の事柄についてお話しさせていただきます.
5月15日 (火) 13:15~16:45 自然系学系棟 B棟627 田崎 博之 氏(筑波大学・数学域)
複素旗多様体内の実旗多様体の交叉の構造
概要: 今回の発表内容は入江博さん、酒井高司さんとの共同研究の結果にもとづいています。 一般化された複素旗多様体には一般化された対称空間の構造が入り、その点対称に関する対蹠集合は点対称の次数に依存せずに定まることを示します。さらに複素ベクトル空間の複素部分空間の列からなる複素旗多様体内の実旗多様体同士の交叉が対蹠集合になることを証明します。これはコンパクト型Hermite対称空間内の実形同士の交叉が対蹠集合になるという田中真紀子さんとの共同研究の結果の一部の拡張になっています。
5月29日 (火) 15:15~16:45 自然系学系棟 B棟627 北別府 悠 氏(東北大学)
測度距離空間上の coarse Ricci 曲率
概要: 距離空間とその上のランダムウォークに対して定義されるcoarse Ricci 曲率と測度距離空間上で定義される曲率次元条件の関係はよく分かっていませんでした。今回 Bishop-Gromov不等式を通してこの二つの概念の関係を調べることができたのでそれについてお話しします。また例を通してランダムウォークの取り方の重要性についても述べたいと思います。
6月5日 (火) 15:15~16:45 自然系学系棟 D棟814 伊藤 健一 氏(筑波大学)
Absence of embedded eigenvalues for the Schr\"odinger operator on manifold with ends
概要: 増大するエンドを持つ多様体上のSchr\"odinger作用素に対し,ある臨界値より大きな$L^2$-固有値が存在しないことを示す.この臨界値はエンドとポテンシャルの遠方での振る舞いから計算され,典型的な例では連続スペクトルの下限に一致する.エンドの形状に関する仮定をある凸関数の存在で抽象的に定式化することで,漸近的にEuclid型なエンドと漸近的に双曲型なエンドの両者を同時に扱うことができる.証明は固有関数に対する先験的超指数減衰評価と超指数減衰する固有関数の非存在の二段階に分けて行われ,ともにMourre型交換子評価が鍵となる. 本講演はE. Skibsted氏(Aarhus大学)との共同研究に基づく.
6月12日 (火) 15:15~16:45 自然系学系棟 D棟814 長谷川 敬三 氏(新潟大学)
Non-Kaehler homgeneous geometry -- pseudo-Kaehler and locally conformally Kaehler structures
概要:  Kaehler構造の自然な一般化として擬Kaehlerおよび局所共形Kaehler構造がある。この講演において,おもに等質および局所等質多様体上の局所共形Kaehler構造について,基本事項を踏まえて出来る限り分かりやすく,最近の研究動向まで話をしたい。
6月19日 (火) 15:15~16:45 自然系学系棟 B棟627 田崎 博之 氏(筑波大学)
コンパクト型Hermite対称空間の二つの実形の交叉II
概要: 今回の発表内容は田中真紀子さんとの共同研究の結果にもとづいています。2010年1月の火曜セミナーでコンパクト型Hermite対称空間の二つの実形の交叉に関する田中さんとの共同研究について講演しました。そこでは二つの実形の交叉が対蹠集合になることを示し、それを利用して交叉の性質を詳しく調べました。特に既約コンパクト型Hermite対称空間の二つの実形の交点数を完全に決定しました。 今回の講演ではこれまでの結果を利用してさらに既約ではない場合のコンパクト型Hermite対称空間の二つの実形の交点数を完全に決定します。これには等長変換群や正則等長変換群の単位連結成分による剰余群の構造に関する村上信吾先生、竹内勝先生の結果が鍵になりました。

2012年度2学期 (9〜11月)

10月2日 (火) 相山 玲子 氏(筑波大学・数学域)
Curvature ellipses of surfaces in Euclidean 4-space
概要: 4次元Euclid空間内の曲面の曲率楕円とは,各接平面内の単位円周を第二基本形式によってうつした像である,各法空間内の楕円です.各法空間内で曲率楕円の位置を判別するための新しい方法を与え,曲率楕円が原点を通る直線内の線分に退化している場合の様子について報告します.
10月30日 (火) 守屋 克洋 氏(筑波大学)
調和逆平均曲率曲面の変換
概要: 調和逆平均曲率曲面とは平均曲率の逆数が調和関数である3次元ユークリッド空間内の曲面である。Bobenkoによる、曲面の動標高を2×2行列を用いて書く定式を通じた曲面論とソリトン理論の関係の中で導入された概念で、変換が分類されている。本講演では、四元数的正則幾何の定式化を用い、調和逆平均曲率曲面を自然に含む曲面のクラスを導入し、特別なベックルント変換とダルブー変換の間に成り立つ関係を報告する。これらの議論はウィルモア曲面の場合と平行に行われる。
11月13日 (火) 15:15~16:45 三石 史人 氏(東北大学)
アレクサンドロフ空間の局所リプシッツ可縮性とその応用
概要: アレクサンドロフ空間とは断面曲率の下限を備えた距離空間です。 多様体の収束・崩壊理論の観点から、 アレクサンドロフ空間の研究は重要であり、 その局所的・大域的な性質が色々と判明しています。 例えば、ペレルマンによって、アレクサンドロフ空間は位相的に局所可縮 である事が知られています。今回、その証明と異なる方法を取ることによって、 主張「局所的な一点へのホモトピーがリプシッツ写像で取れる」事 を証明しました。講演では、主張の証明のアイディアと応用を述べます。

2012年度3学期 (12〜2月)

12月4日 (火) 15:15~16:45 永野 幸一 氏(筑波大学)
CAT(0)空間に対する漸近的位相正則性について
12月11日 (火) 15:15~16:45 自然系学系棟 B棟627 守屋 克洋 氏(筑波大学)
極小曲面のダルブー変換
概要: リーマン面がトーラスである場合、ユークリッド空間内の平均曲率一定曲面のダルブー変換はガウス写像であるところのリーマン面から二次元球面への調和写像の変換で説明される。四次元球面内のウィルモア曲面の場合にも共形ガウス写像であるところの調和写像にたいして同様なことが成立することが期待される。四次元ユークリッド空間内の極小曲面はガウス写像が調和写像であり、共形ガウス写像が調和写像であるので、平均曲率一定曲面とウィルモア曲面の交差するところにある。そこで、極小曲面のダルブー変換を調和共形ガウス写像の変換で説明する。後者はK. Leschke氏との共同研究である。
1月8日 (火) 15:15~16:45 田丸 博士 氏(広島大学)
リー群上の左不変計量の幾何と部分多様体論
概要: 各リー群上の左不変計量の全体は非コンパクト対称空間となることから, 左不変 計量の幾何の研究には非コンパクト対称空間への群作用が自然に登場する. 本講 演では, 特に 3 次元可解リー群の場合に, 非コンパクト対称空間への cohomogeneity one 作用と, 左不変な代数的 Ricci soliton の様相が, 極めて 良く対応していることを述べる. また, その高次元リー群への一般化や擬リーマ ン版についても触れる予定である.
1月15日 (火) 15:15~16:45 伊藤 光弘 氏(筑波大学)
Complex Hyperbolic Space and Horospheres
概要: Horospheres are level hypersurfaces of Busemann function. From a geometrical view point I talk about certain characterizations of complex hyperbolic space and quaternionic hyperbolic space.
1月22日 (火) 15:15~16:45 自然系学系棟 B棟627 川上 裕 氏(山口大学)
ガウス写像の除外値数の上限の幾何学的意味について
概要: 複素平面から閉リーマン面への正則写像の除外値数の最良の上限は その閉リーマン面のオイラー数と一致することが知られている. 本講演では,藤本坦孝氏により得られた,3次元ユークリッド空間内の 完備極小曲面のガウス写像の除外値数の上限である“4”や 講演者と中條大介氏との共同研究で得ることができた, 3次元アファイン空間内の弱完備な非固有アファイン波面の ラグランジアンガウス写像の除外値数の最良の上限である“3”の 幾何学的意味について解説する.また時間が許せば,ガウス写像の理論と 正則曲線の理論との関係についても述べる予定である. 参考文献 Yu Kawakami On the maximal number of exceptional values of Gauss maps for various classes of surfaces, Mathematische Zeitschrift, December 2012
1月23日~1月25日 自然系学系棟 D棟509 川上 裕 氏(山口大学)
[集中講義]極小曲面論のガウス写像の値分布論
概要: 3次元ユークリッド空間の完備極小曲面のガウス写像の除外値問題についての研究成果および今後の展望について論じる。 1,イントロダクション(極小曲面の歴史と除外値問題について) 2,極小曲面の基本事項 3,極小曲面の性質 4,Enneper-Weierstrassの表現公式 5,完備極小曲面(ここで、川上・小林・宮岡の結果を証明) 6,Gauss写像の除外値問題(1) 7,Gauss写像の除外値問題(2)(ここで主定理を証明+波面のことも触れる)
1月29日 15:15~16:45 自然系学系棟 B棟627 田崎 博之 氏(筑波大学・数学域)
有向実Grassmann多様体の対蹠集合
概要: コンパクト型Hermite対称空間やそれを含むクラスである対称R空間の 対蹠集合については、2011年2月の火曜セミナーで田中真紀子さんとの 共同研究の結果について講演しました。 今回の講演ではそれを利用して、有向実Grassmann多様体 G_k(R^n) の 極大対蹠集合が {1, 2, ..., n} のある性質を持つ部分集合の族と 一対一に対応することを示し、このある性質を持つ部分集合の族を決定する ための方法を解説します。 さらに k が 4 以下のときにこの方法を実行して得られた極大対蹠集合の 分類結果を示します。 この分類結果と関連する有限幾何学や不変交代形式についても触れたいと 思います。
2月12日 15:15~16:45 自然系学系棟 B棟627 田中 真紀子 氏(東京理科大)
Isometries of Hermitian symmetric spaces
概要: この講演の内容はAugsburg大学のJost-Hinrich EschenburgさんとPeter Quast さんとの共同研究によるものです。 コンパクト型または非コンパクト型Hermite対称空間Mは、半単純Lie群Gの随伴表現の 軌道として、GのLie環gの部分多様体として実現できますが、このとき、Mの任意の等 長変換がgの線形等長変換に拡張できることを証明しました。講演では、この研究の 背景を含めてお話ししたいと思います。

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管理: 田崎博之 
更新日:2019年8月9日